朝鮮語教育学会設立趣意書
朝鮮半島は日本にとって地理的に最も近いのみならず、歴史的にも文化的にも深い関係を持ち続けてきた地域であり、現在においても、政治的・外交的・経済的に重要な、人的交流の最も多い隣国です。しかしながら近代における両地域間の不幸な関係が原因となり、つい20年ほど前まで、日本における朝鮮語教育はごく限られた場で行なわれていました。ところが1990年代、円高や韓国の経済成長と社会的安定により、日韓の人的交流は大きく増え、朝鮮語を学ぼうとする学習者も朝鮮語を学べる機会も格段に増加しました。
本会は、そのような朝鮮語教育拡大期であった1999年3月、朝鮮語研究の蓄積を共有し、朝鮮語教育に関わる諸課題への対応を議論し、様々な立場にある朝鮮語教師の横のつながりを持つべく、「朝鮮語教育研究会」として設立されました。
当初は発起人代表であった同志社大学の油谷幸利氏の研究室を事務局とし、同大学田辺校地で参加者10名前後の研究会を開催していましたが、まもなく関西圏の会員増加に伴い、より交通至便な同大学今出川校地や吹田市労働者会館、さらにはキャンパスプラザ京都で定例会を開催するようになりました。同時に、共通の関心事を持つ会員同士の小グループが自主的に分科会活動を始めるようになり、次第に3ヶ月に1回の定例会開催日の午前は各分科会を午後は全体会を行なう形へと定着してきました。
2000年代中盤には会員も北海道から九州にいたる全国に広がって100名を超え、数年前からは定例会の開催場所も東京、京都、福岡など全国を巡回するようになりました。定例会には毎回全国から多くの参加があります。2006年からは研究会誌『朝鮮語教育-理論と実践-』を年1回発行していますが、各投稿論文には2名から3名の査読者をつけ、論文誌としての水準を保つ努力をしています。また、同じく朝鮮語に対し主に言語研究の側面から取り組んでいる朝鮮語研究会とも連携を図っており、数年に一度、合同研究会を行なっています。
このように、かつては地方の同志が細々と行なってきた「研究会」でしたが、内容の充実と規模の拡大に伴い、全国の会員や朝鮮語教育界に対し一定以上の責任を負うべき組織となったと自覚しています。そこで設立15年目を迎えたことを機に、内外からの要請にも応える形で会の名称を「朝鮮語教育学会」と変更し、朝鮮語教育に携わる者の学術団体として、新たな出発を図ることとなりました。
朝鮮語教育に関わるこれまでの取り組みを研究と実践の両面からさらに充実させ、日本における朝鮮語教育のさらなる発展に寄与することで、日本と朝鮮半島との相互理解と交流拡大に貢献できるものと考えます。よってここに、朝鮮語教育学会の設立を宣言する次第です。
2014年7月1日
朝鮮語教育学会 世話人一同