【カナタ電話第3巻第3号】

キーワード:単語の意味の違い,運営と運用の違い,保存と保全の違い,開発と啓発の違い

Q:(第3巻第3号:1993年秋) 以下の単語の意味がどう違うのか教えてください。
(1)운영(運営)−운용(運用)
(2)보존(保存)−보전(保全)
(3)개발(開発)−계발(啓発)
A: 国語には意味の似通った単語が多数存在します。意味の似ている言葉を比較してみるとある程度までは同じ意味ですが、互いに意味の差があります。また、単語ごとに似ている程度に差があります。その意味の差はほとんど分からない場合もあれば、容易に感じられるほど意味上に距離がある場合もあります。学界では単語間のこのような関係を同義関係と言うこともありますが、普通は類義関係と言います。日常生活の中で使われる単語の間には,あらゆる文脈で完璧に置き換えられるほど意味が等しいようなものは存在しないと考えるからです。類義関係にある単語の意味の差異をよく把握し,適切な文脈で適切な単語を選び使うことができれば、言語生活はより一層豊かなものになります。しかし、実際の言語生活ではかえって似ている意味を持つ単語を区別して使うことは難しいのが実情です。特に漢字語の場合は漢字語の特性上意味が似ているだけでなく、発音まで似ている単語が存在し,これらの意味がどう違うのか分かりにくい場合も少なくありません。今回、質問なさった単語はその代表的な例と言えます。類義語を集めてその意味の違いを詳しく説明してくれる辞典があれば助かりますが、国語にはまだそのような辞典はありません。
 意味の差が分かりにくい場合はその単語が使われている文脈を比較してみれば,その差が遥かに分かりやすくなります。ある文脈の中で類義関係にある他の単語に置き換えても意味の差がほとんど感じられないとしても、違う文脈で比較してみるとある特定の単語だけが使えたり他の単語に置き換えると意味の差がはっきりする場合があります。
 まず「運営」と「運用」ですが、「運営」は「学校、党、企業、商店、学会、大会」などと一緒に使いますが、「運用」は「基金、予算、物品」などと一緒に使います。二つの単語の間の意味の違いにより,このように使われる文脈が違ってきます。このような文脈上の違いに基づいて意味を考えてみると二つの言葉とも何かを動かしていくという点では共通の意味を持ちますが、「運営」は組織や機構などの対象を管理しながら動かすという意味なのに比べ、「運用」は対象を動かしながら使用するという意味だと言うことが分かります。
 「保存」と「保全」の場合はそれぞれ単独で使われている文脈を探すことが難しいです。したがって,意味の違いも明確に現れません。一例を挙げてみます。最近、環境の重要性に対する認識が高まるとともに,環境を守り育てていかなければならないと言う言葉をよく耳にします。その時、環境を「保存」しなければならないと言ったり、「保全」しなければならないと言ったりします。ですが、文脈の違うケースが全くないわけではありません。ほとんどの場合、「領土」は「保全」すべきだと言い、「文化財」は「保存」すべきだと言います。「領土」はそのまま放置しておいても毀損される懸念が小さいですが、「文化財」はそのままにして置くと毀損される懸念が大きいという点がこのような差を生んだひとつの理由だと考えられます。他の面から見ると領土を保全するという言葉には今後も現在と同じ状態にいさせるという意味がありますが、文化財を保存するという言葉にはこれからの状態に対する関心は含まれていません。このような点を考慮してみると、「保存」と「保全」が何かを守るという意味を持っている点においては共通していますが、「保存」にはそのままにしておくと毀損される懸念のある対象を守らなければならないと言う意味があり,「保全」には現在の状態を守って将来も同じ状態に保たれるようにするという意味があることが分かります。
 「開発」と「啓発」は国語辞典には次のように説明されています。
 「開発」:1.(土地や森林などを)開拓し有用にすること
      2.(知識や能力などを)より引き出し伸ばすこと
      3.(産業や経済などを)興して発展させること
 「啓発」:(知恵や才能などを)気付かせて分からせること
 二つの単語が使われている文脈を比較してみると「啓発」の方の使用範囲が狭いことが分かります。「能力、素質、才能」など人間に限って用いられる属性を示す言葉に制限されて使われることが分かります。これに比べ、「開発」は「技術、経済、本、製品、国土、人材」など主として物質的なものを示す言葉と共に使いますが、時には「能力、才能」などの単語とも一緒に使うことが分かります。「開発」の(2)がこの点を反映した説明と見られますが、この意味は「啓発」の意味とほとんど同じだと見なすことができます。従って、「開発」の方が意味の幅が広いと言えます。ですが二つの単語はただ単に意味の幅に差がある、というだけではありません。「開発」と「啓発」を比べてみると両単語とも状態を改善していくという点において共通の意味を持っています。しかし何かを「啓発」していくためにはその何かは潜在的なものでなければなりませんが、「開発」にはこのような前提はありません。これらの点から考えると「開発」の方は単に状態を改善していくという意味しかありませんが、「啓発」の方には潜在している属性を引き出してよりよくするという意味が含まれていることが分かります。「能力」は全くないが「開発」しますと言うことはできますが、「啓発」しますと言った場合何となく不自然な感じがするのはこのような理由からです。
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キーワード:正しい綴り字,쏘였다쐬었다

Q:(第3巻第3号:1993年秋)「벌에 쏘였다」 と 「벌에 쐬었다」のどちらが正しいですか。
A: ハングル綴り法第 38項には「’ㅏ, ㅗ, ㅜ, ㅡ ’の後に’-이어 ’が来て縮約した場合は縮約したままの形で書く」という規定があります。これによりますと「쏘이어」の縮約形は「쐬어」、「쏘여」の両方とも認められています。これは受け身の接尾辞である「-이-」が前の音節に付いて縮約されることもあり(「쏘여」)、後ろ(語尾)の音節に付いて縮約されることもある(「쏘이어」)のがどちらも反映されたからです。従って、「벌에 쏘이었다/쐬었다/쏘였다」の3通りとも使えます。ただ、「쐬여」、「쐬였다」は「쐬다」に「-어」、「-었다」が付いたものですので「ハングル綴り法」第15項に従い「쐬어」、「쐬었다」と表記しなければなりません。
 これに似た言葉に「싸이어(쌔어/싸여),보이어(뵈어/보여),누이어(뉘어/누여)」などがあります。
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キーワード:正しい綴り字,아무튼아뭏든

Q:(第3巻第3号:1993年秋)「아무튼」と「아뭏든」のどちらが正しいですか。
A: 「아무튼」が正しいです。これは以前の綴り法では「아뭏든, 하옇든」と表記していたのを現行の綴り法では「아무튼, 하여튼」に表記を直したからです。その理由は「아뭏-, 하옇-」が他の語尾には結合しないで、「아뭏-든, 하옇-든」の形だけで使われていることや また、用言の活用形ではなく副詞に転成して使われていることから本来の形態に結びつける必要性がなくなり発音されるがままに表記するのです。
 「ハングル綴り法」第40項[付則3](×印は間違った語形)

    ×아뭏다, ×아뭏고, ×아뭏지, ×아뭏게… ○아무튼(아뭏-든)
    ×하옇다, ×하옇고, ×하옇지, ×하옇게… ○하여튼(하옇-든)

 しかし「이렇든(지), 저렇든(지), 그렇든(지), 어떻든(지), 아무렇든(지)」のような言葉は 「이렇다, 저렇다, 그렇다, 어떻다, 아무렇다」に結び付く多様な語尾の中のひとつ 「-든(지)」が結合して副詞に転成したものなので、発音のままに表記するのではなく(×이러튼, ×저러튼)、原形を明らかにし「-든(지)」と表記します。
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キーワード:正しい綴り字,어쨋든어쨌든

Q:(第3巻第3号:1993年秋)「어쨋든」と「어쨌든」のどちらが正しい表記ですか。
A: 「어쨌든」と表記しなければなりません。それは「어찌했든(어찌하였든)」の略語で「어찌하다」の活用形「어찌해」、「어찌했든」などの「」が略され「어째」、「어쨌든」になったからです。「어쨌든」の場合、発音は[어짿뜬]ですが完全な言葉が略されるときはその元の言葉の形態を明らかにして表記するのをハングル綴り法は基本原則としています。ですので「어짿뜬」や「어쨋든」ではなく「어쨌든」と表記しなければなりません。これに似た例に「그랬든(그리했든)」、「이랬든(이리했든)」などがあります。
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キーワード:単語の意味,하시압 の意味は

Q:(第3巻第3号:1993年秋) 時々公文書等に「…하시압.」のような表現がありますが、どういう意味ですか。
A: この形態は元来尊称を表す先語末語尾「」と謙譲を表す先語末語尾「압(옵)」が結合したもので後ろに「소서」が省略されていると言えます。従ってこの形態はだいたいある情報や告知を知らせる文章などで、多数の人々にある仕事を要請する意味を表す終結語尾として使用されます。そしてこの形態は開化期に広告などによく使われていましたが、その後次第に姿を隠し現在はほとんど使用されていません。従って現在目にしている形態は一種の意図的な表現と言えます。
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キーワード:単語の意味の違い,「문민」と「민간」の違い,文民と民間の違い

Q:(第3巻第3号:1993年秋)「문민」と「민간」の意味はどう違いますか。
A: まず国語辞典では次のように説明しています。
 문민(文民):職業軍人でない一般国民。
  〈参考〉文民政治:文民が行う政治。軍部政治に対立する言葉として使われる。
 민간(民間):官庁あるいは政府機関に属さない庶民の社会。
 上記の説明から分かるように「문민」という言葉には「군부」に対応して使われる用法があり、「민간」という言葉には国家機関に対応して使われる用法があります。このことからその違いが分かると思います。
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キーワード:変則,「하얗다」の過去形はどう書くか

Q:(第3巻第3号:1993年秋)「하얗다」の過去形はどのように表記すればいいでしょう?
A: ご質問の「하얗다」という形容詞はいわゆる「」不規則用言です。よって他の用言と少し違う活用形態を示しますが,これはこの用言の語幹末音「」の特殊性に基づくものです。つまり、「」は起源的に「하다」と関連していると推測され、その活用形も「하다」の活用形に似た様子を見せます。以下にその過程を示します。

 「하얗-」+「-아/어(지다)」は「하얗-」+「-애(지다)」>「하얘(지다)」になります。  (これは「하-」+「-아도」>「하-」+「-애도」>「해도」のような語尾の変則性を見せる「하다」の活用形を考えればいいです。)「하얘(지다)」で二つ目の音節の母音が「」になったのは語幹にあった「」の影響によるものです。ですからご質問の「하얗다」の過去形は「하얬다」になります。

hayah-+a(cita)
haya-ay(cita)母音間の「」の脱落
hayay(cita)
hayε(cita)単母音化
(*発音符号/ε/は//の音価を表示するので/уε/=//になる)

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